第34章 書庫での哀苛(R18)
は………
消えそうなほど小さな溜息を吐いた瑠璃の耳に、
「兄様っ、探しましたのよ‼︎」
よく通る藤隆姫の声が外で大きく聞こえた。
小鳥が囀るように、話をする藤隆姫。
そして、外が静かになった。
瑠璃は、何とか言って話をしたい気持ちはあったが、出来なかった。
引き留めも出来なかった。
遠くに微かに、政宗を探す姫の声と足音が聴こえていたから。
もし、こんな場面を見られたら、
面倒事が大きくなると思ったから
言葉を飲み込んで、
言いたい言葉をすり替えて、
『…行って下さい…』と言った。
政宗は瑠璃の気持ちを知らず、
勘違いをしたまま出て行った。
大好きな人に、苛立ちと怒りを含んだ非難と冷責の眼を向けられた。
「…っ……」
更に深く頭を垂れた。
(直ぐに、きちんと聞けてたなら……)
怒らせる事も、きっと、誤解させる事もなかった。
後の祭り、だった。