第34章 書庫での哀苛(R18)
事後いつもなら、
色っぽい声で『好きだ』と言ってくれた。
優しく熱を帯びた瞳を向けてくれた。
(抱きしめてもくれへんのやな……)
片膝を付いて、頬を撫でることも、
気持ち良かった、と口付けることも無い。
(眼を合わせてもくれへん…)
『お前が足りなくて』と言ったにも拘らず、事が終わったら、身成を整えて、何事も無かったかのような無感動に静かな低い声で言われ、瑠璃は酷く落胆した。
(抱く為だけに待ち伏せてたんや…な…)
そう思うと瑠璃は自分が馬鹿みたいに思えた。
痛かった。
多分、心が…。
半ば強引に軀を開かれた、
それに対しての労りもない。
いつもの政宗とは違う気がした。
瑠璃が見上げる政宗は、
冷めた空気を纏って見えた。