第33章 撹嵐の姫君
「死ぬまで俺の隣に居ていいのは、
そこに控えている瑠璃だけだ」
さめざめと泣く藤隆姫に瑠璃の名を突きつけた政宗。
「瑠璃、こっちへ来い」
「いいえ、私はここで…」
瑠璃はやんわりとした声音で断り頭を下げた。
その上から声が飛んできた。
「アナタっ!何処の女です⁉︎
どうやって取り入ったのですっ!」
(女だ…)
と思った。
幼いと思っていたのに、何処で覚えたのか、本能か、台詞も発せられた金切るような甲高い声も、
女だった。
姫の形相は、幼い瑠璃を叱った母の様で、
瑠璃は咄嗟に身を固くし、口を噤んだ。
そんな瑠璃を知ってから知らずか
「藤、それ以上声を荒げるな」
政宗が、今までよりも冷たい声音で恫喝の気を放った。
そんな政宗に藤隆姫は惶急(こうきゅう)し、襟正(きんせい)する。
※惶急…恐れあわてる。
※襟正…襟をただす。