第33章 撹嵐の姫君
離れて正面に見える政宗の顔に特別な感情は一切見られない。
無表情。
声も淡々と無感情。
「お前の父上がなんと言っても、
お前が遠くから何度足を運んでも、
お前と一緒になる気はない。
側室もない」
(直球⁉︎)
顔には出さないが、瑠璃も驚いた。
姫の気持ちへの配慮はおろか、
声、言葉、表情、どこにも優しさは一片たりとも見えない。
(一刀両断やん……)
流石の瑠璃も同じ女として心が痛んだ。
「ゔ…くっっ…ぇ…兄様…グズ…
ひっ、ひど…よ…ぅぅ…ぐす……」
藤隆姫はあっという間に泣き出してしまった。
しかし、政宗は
「何度も断った。
お前の父上が伝えていたかいなかったかは知らないが……。
聞き分けなく勝手に此処まで来たのはお前だ」
呆れ気味の声音と態度を示すだけだ。
「とにかく、お前とは話だけでも縁談はない」
睨みつけるような高圧的な視線。
(まるで、敵を見るような眼で…)
あまりの冷たさに瑠璃はゾクリとした。