第33章 撹嵐の姫君
瑠璃は開け放たれた襖の外側に控えていた。
外廊下に正座をして居れば、藤隆姫の背中と、対面している政宗の顔が見える。
幼姫の体(てい)。
薄萌葱の着物がよく似合う。
柔らかな形の背姿。
緊張、その中に期待や嬉慕が滲んで感じられる。
「藤隆姫、遠いところ、よく来てくれたな」
「政宗兄様にお会いしたかったからですわ」
弾んだ声が間髪入れずかえって来た。
(『政にぃ、大好きっ』)
瑠璃の胸の奥に、大好きな兄を呼んで抱きついた幼い頃を思い起こさせる藤隆姫。
「お父様から文は届いたのではありませんか?私っ…」
「あぁ、お前との縁談願いの文は何度も届いていた」
「だったらっ」
「それは、何度も断った」
「⁉︎……」
姫の回りの空気が止まった。