第31章 雨降り前の夜(R18)
(多分、こんな気持ちも初めてや)
知らなかった気持ち。
それは、愛着、執着、独占欲、
そんなものを持ったことがなかったからだ。
家と母に縛られ、そう言う感情を捨て、
忘れざる得なかったから。
「瑠璃…こっち来い」
政宗か瑠璃を呼べば、瑠璃は静かに膝を滑らせ間を詰める。
近づいた瑠璃を政宗はおもむろに抱きしめた。
(何で?)
そう思った次瞬、
「本当に、ずっと独りたったんだな、お前…」
そう言われた。
(独り?)
「大切な友も、物も、何も持たずに来たんだな」
(あ…そうや……)
「可哀想ですか?」
抱き合ったまま、背中に話をする。
「いや、別に。
すげぇなと思っただけだ。
無欲、無心なんてそんなに簡単にはなれるもんじゃないだろ。
ほら、俺なんて特に、なっ?」
政宗は自らを引き合いに出す。
「………」
(褒めてるんか、慰めてるんか…よぉ分からへんけど……)