第31章 雨降り前の夜(R18)
ぅふふふ…ぁはははは…っ
堪えきれなくなって瑠璃は声を出して笑い出してしまった。
笑いながら瑠璃は、政宗の背中の着物を強く握りしめていた。
(悔しいかった?悲しかった?寂しかった?…もう分からへんな…考えたこともなかったわ……)
けれど、それは政宗が代わってくれた。
「…ははは…クク…、それ、
政宗が考えるようなすごいモノじゃないです。
あの家で生きてゆく為のただの処世術ですよ」
(処世術……)
「悔しい事言うなよ」
「今思えば、です」
瑠璃がそう言って、くっつけていた胸を離し、政宗と眼を合わせる。
その瞳は揺るがず、強さを湛えて輝いていた。
フッ……
「他人が思うより本人は気にしてないもんか」
「ふふふ…そうですね。
それに、そう言うのは政宗がいつも変わってくれるから」
清朗とした声音が政宗の心を安堵させた。
「これからもっと色んな気持ち、教えてやるよ」
鼻先が触れ合う近さで2人、笑い合う。