第30章 奥州からの一行
(政宗さん、大丈夫ですか。顔色悪いですよ)
ずっと黙ったままの政宗に家康が声を掛ける。
意地悪ではなく気遣いからだ。
(悪くもなるってもんだぜ)
政宗は掌に冷や汗を握って気丈に顔を上げていた。
(? 姫が来たくらいで、何をそんなに緊張するです…かー…!)
小声で言いながら、家康は、政宗が顔色を悪くしている原因に気付いて、
後方の気配を伺った。
「挨拶はしかと受け取った。
大條の藤隆姫。
して…伊達家へ帰参した大條実頼本人ではなく娘の貴殿が安土に来た理由は何だ」
上座から信長が姫をジロッと見下ろす。