第28章 狐の残謀と逃げる兎
駆けて宇治川の辺りまで来た処で速度を落とした3人。
「馬に水をやろう」
信長の提案で河原へ鼻先を向けた。
「して、瑠璃よ」
「はい」
「次からは、女物の着物でなく、貴様には高価な袴を用意してやらねばならぬな」
信長が呆れ顔で瑠璃の上から下までを眺めて愉快そうに笑った。
横から政宗が
「脚が丸見えじゃないだけ、今日はマシだな…」
馬に跨っている瑠璃をジッとみて、溜め息をつく。
結われていた髪は緩くなって、解けかけている。
「あーあぁ…台無し」
麗雅には程遠い。
切り裂いた着物を左右に分けて、
美しい脚 剥き出しで跨っている。
美しい着物は見るも無残だ。
そんな2人に瑠璃が、
「必死で助けに走ったのに…そんな事言うなんて。
もう、次からは助けてあげませんからねっ」
と言って、プンとソッポを向いた。
それでも、笑みが溢れるのか、楽しそうにキラキラした瞳で、口角を上げて川向こうを眺めている。
(本当に外と内では別人だぜ)
でも、
(どっちのお前も好きだ)
と思った政宗だった。