第28章 狐の残謀と逃げる兎
何頭もの馬の足音と砂埃が庭内を騒がせる。
無秩序に走る馬に人は右往左往乱れる。
「うわぁ!」
「どうして馬がっ」
ちょっとした混乱の中に、規則的な馬の蹄の音。
瑠璃は政宗と信長にだけ矢が当たらないよう注意し、馬上から弓を構える。
(家康様に射駆けを習っててよかった)
ふと頭を過った家康との厳しい朝練の光景に、瑠璃は苦笑した。
2人背中合わせになり短刀で刀を躱している。
(信長様は短刀すら持ってなかったはず…)
良く見れば、柄に先に当たる部分がキラキラと光っている。
(簪、いつの間に)
瑠璃は眼を細めて笑った。