第28章 狐の残謀と逃げる兎
「女は何処だ〜っ」
「探せ探せぇ」
「ここからだしてはならぬ」
ここで考迷していて捕まっては元も子もない。
とりあえず、動き出そうとして、瑠璃は向こうに在る建物に気付いた。
「‼︎」
「さあ、貴方の行くべき処へお送りいたします」
にじりながら、後退りする義昭は、
一変、身を翻し、逃げだした。
逃げ切れる訳がないのに。
光秀が緩慢とした速さで追いかける。
「何処まで逃げれるかな」
蛇はもう義昭の足に噛み付いていた。
人気の無い庭園に追い詰められる。
「ここで、お終いですね」
「京は我のものだ!終いにはせぬわ!」
血眼の義昭が刀を抜き、振りかぶる。
ガッ、キイィン!
全体重のかかった刀を光秀が軽々と受け止めた。
「無力な将軍、貴方はもう用無しです。
あの人はまだ死んでもらっては困る。
道半ば、貴方の様に用無しになるまでは…」
光秀は義昭の体重を受け止めながらも、
意味深に言ってフッと嘲笑する。
まるで、信長も自分の手の中だと言っている様な。
嘘か誠は光秀以外判らない。