第28章 狐の残謀と逃げる兎
敷地内、小屋の中
狩の為の弓矢が掛けて在るのを瑠璃は見つけた。
「‼︎」
駆け入ると
着ていた薄手の打掛を脱ぎ広げ、そこに矢を包み、
残した一本の矢先で着物の後の裾を大きく切り裂いた。
「よっし!」
履物を脱ぎ、外からチラッと見えるよう、
入口近くの敷居に無造作に転がす。
小屋に逃げ入り、隠れている風を装った。
そして、
足袋の足で再び走りだす。
着物の裾を切り開いた事で駆けるのが楽になった。
(ここから、矢を放つ?)
見回してもどの小屋や建物の屋根には登れそうになかった。
(距離的に無理ね…矢先に火も無理だし…)
立ち止まり考えていると、離れたところから声が聞こえてきた。