第26章 京に立っ薫煙
瑠璃が輿を降りると、
誠仁親王が蹴鞠遊びを催すので、騒がしかろうと、
奥の離宮へと通された。
行くすがら女中が薄紅の花の枝を抱え、
恭しく頭を下げたのが、瑠璃の眼に止まった。
「親王様は、本日は晴天にて気分も良く、内におるのも勿体ないので、蹴鞠をすると仰られまして」
案内の久我氏が、誰が聞いたでもないのに、
親王が蹴鞠を催した経緯を口にする。
(何の言い訳?離宮を使うこと?)
口の良く動く公家に瑠璃は違和感を感じた。
通された場所は
親王の為に建て替えられた離宮にあって、かなり質素だった。
(庵(いおり)に毛が生えた程度じゃねぇか)
(ちょっと広い茶室?)
明らかにおかしい、と思うしかなかった。
が、信長は静観していた。