第26章 京に立っ薫煙
「こっ、これは、義昭様っっ、
いつ京へお戻りに⁉︎」
突然現れた義昭に、驚いて平に伏した男。
「今日、用ができたのでな。
泊めてもらえるであろう?」
「はっ、勿論でございます」
辻を過ぎると門の前を発ってゆく
(牛車?)
((牛車か))
興福寺の前に停まっていた豪華な牛車が眼に入った。
「この時代でも牛車は使われているんですね」
「……」
「…まぁ、見れたのは奇跡的だろうな」
信長は黙って、牛車から目を逸らし、
政宗が瑠璃に苦々しく答えた。
「物凄く豪華な車ですね」
祭りでしか見た事のない瑠璃は興味深く振り返り牛車を見た。
誰が乗っているのか…。
暮れゆく京の逢魔が刻だった。