第25章 強く在れ
「城の弓術場にいるなんて珍しいね」
美弥の言葉に家康は弓に視線をやる。
「弦の張り具合をみてた。
誰かが切っちゃったからね」
「誰かって、わざと誰かが切ったの?
悪戯?嫌がらせ?」
美弥が心配そうにしながらも、
興味津々で尋ねる。
「嫌がらせじゃなくて、ちょっと、捻くれた思い遣り、だろうね」
家康が答えると
「なーんだ、家康と同じだね。
ん〜…でも、誰が何の為だったのかな」
美弥が首を傾げる。
(俺と同じ……)
「ははは、そりゃ、いいや」
突然笑った家康を美弥は不思議そうに見ながらも言った。
「家康、やっぱり、笑った方が良いよ」
なにも知らない美弥がそう言って、
陽射しのようにフニャっと笑った。