第25章 強く在れ
(君も傷ついて、苦しんだのか…
だからそんなにも痛いほど潔癖な事を言うんだね)
瑠璃の辛そうなあの顔は、
自分に自分を重ねていたからだ、と家康は気付いた。
(人の汚さ、人の脆さ、そして、生への執着を…どうして、平和な日々を過ごした女が知ってる……)
そう思って家康は酷く辛くなった。
感情の見えない瑠璃の美しい顔を見つめる。
(判明(わか)るのか?…君に触れれば…)
ふと考えた、そんな事。
「瑠璃…ちょっと、だけ…いい?」
そう言った家康は、包帯を巻き終わったまま力無く握っていた
瑠璃の手を引いて、
胸に寄せると、背中に腕を回した。
体温を感じる。
瑠璃は家康に抱きしめられても自らは手を回さない。
ただ、抱きしめられているだけ。