第25章 強く在れ
「軟骨を下さい」とやって来た瑠璃。
「コレ…弦が切れた?」
弓の練習をしていて、切れた弦が腕を弾くことはたまにある事だ。
痛々しくミミズ腫れになっていた。
軟骨を塗った上から包帯を巻く。
「きつかったら言って」
「家康様…私は…」
瑠璃は家康の手元を見ながら、
訥々と言葉を紡ぐ。
「家康様が…弱いとは、思いません」
「は…突然、何を…」
意表を突かれて家康が言葉を失った。
「幼い子に何が出来ますか?
その幼子に向かって、大人が放った心無い言葉は、その人達が弱かったからですよ」
(どんな、自論なんだ…)
「汚い大人にならなくて良かったですね。
家康様」
瑠璃が鮮やかに笑う。
(君は何を知ってるんだ?)
家康はゾクリと背中が寒くなった。
鮮やかな笑顔は凍るような冷ややかさを見せている。
家康は瑠璃の冷笑に
「お節介だ」と突っぱねそびれた。