第25章 強く在れ
「家康、家康ってば!」
「え?」
「ボーっとしてどうしたの?体調悪い?」
薬の調合を手伝っていた美弥が心配そうに家康を見ていた。
「あ…ちょっと考え事してただけ。
アンタと違って考える事色々あるんだよ」
咄嗟に平静を装った。
「家康ってば、ひっどーいっ!」
美弥は頬を膨らませ口を尖らせプリプリするけれど、家康は上の空だった。
「……」
「…家康…今日は、私1人でやるから…」
美弥が気を利かせて先にそう言った。
「あっそ…じゃあ、お願い」
家康は心ここに有らずの様子で返事をすると、
そのまま出て行った。
俺はまだ、弱い。
今川の事、人質の頃の事を、
引き摺っている。
どうしても、消せない記憶。
(嫌だ……)