第21章 文蛍
「寂しくない事を知らないから」
(それは寂しさしか知らない と言っているのか)
「私は 寂しい のが日常だったから、
寂しくない事を知らない。
だから 寂しい がわからないの」
「…言ってる事が…解るようで…解らないぞ瑠璃」
政宗は混乱した。
「家の中では独り。
叱られる時以外、父も母も私の目を見なかった。
兄様達と一緒なのは母の目がない時だけ。
私の望んだ習い事でもない。
特別な楽しみもない。
学舎に行っても友達も距離を置いて接して来た」
これは思い出話とは呼ばない。
「今、政宗がこの話を聞いて、
寂しい、可哀想だと思ったとしても、
私は寂しくも可哀想でもありません。
だって、それが普通だったからです」
瑠璃が手元の光を見つめながら淡々と語って、政宗に再び視線を向けた。
「今ここに兄様達がいなくてもどうって事はありません。
思い出せば懐かしいくらいのもんです」
そして、心奪われるような美しい笑みを見せる。
その美笑が政宗にはとても痛々しく思えてならなかった。
「それに、たとえ寂しくても政宗がいるから平気だもん」
腕を絡め取られた。