第21章 文蛍
フワリと飛んできた蛍が瑠璃に止まった。
肩で、長い髪の上で、点滅している。
宙に手を差し出せば、指先に止まる。
「なぁ瑠璃、さっきみたいな話、
この蛍みたいに沢山あるか?」
「沢山…ないです、けど…」
(『お前の家の事、いつか話してくれよ』って、言ってくれたっけ)
以前の政宗の言葉を思い出し、政宗が自分の心を知りたがっているんだと、察した瑠璃は、
深呼吸をすると口を開いた。
「政宗…ありがとうございます。
私、兄様達にあえなくても、家に帰れなくても、寂しくなんかありませんよ。
だってーーー……」
暗闇の中に鈴のような瑠璃の声が吸い込まれ消えた。
けれど、政宗の耳にはひどく強く残った。
想像していなかった言葉だったから。