第21章 文蛍
「蛍、久しぶり。
私も幼い頃は兄様達と毎年見に行きました」
瑠璃の声音は静かなままだったけれど、
政宗には少し寂しげに聞こえた。
だから、
「寂しいか?」
率直に問うた。
「そんな風に聞こえましたか?」
クスクス
意外そうな声を発して瑠璃は笑った。
「少し」
真面目に返答した政宗に瑠璃は
「政宗、案外センチメンタルっ。ふふふ」
笑う。
躱された。
「は?」
(俺の知らない言葉使いやがって)
少しの疎外感と言うか、一線引かれたようで政宗は面白くなかった。
けれど、
「政宗、気のせいですよ」
と、瑠璃が政宗に向かい合う。
包んでいた両手を少し広げた。
淡い光が ポゥッ…と漏れ出し、
直ぐ眼の前のお互いの顔が照らされ見えた。
他に光のないこの時代、
小さな光でもとても明るく輝く。
瑠璃は笑っていた。