第21章 文蛍
「私達の時代はわざわざ、水の清らかな処へ出掛けなければ蛍は見れません」
「何故だ?」
「人が増え、大きな町を作り、護岸工事をし、色々なモノで水を汚したからです。
戦もない、物が溢れ食べ物も溢れ、豊かな時代は、本来在るべき物や自然を汚し、壊し、失くしてしまった。
人の心も汚れ、壊れ冷たくなってしまった」
政宗には瑠璃の話す声が、
冷めて小さく、痛々しく聞こえた。
((色んなモノにまみれた結果…))
「ここでは、人の心も自然も失われていなくて…綺麗ですね」
「そうか?殺し殺され、陥れながらの世だぞ」
「それでも、人らしく生きてる」
(皆、一生懸命生きてるから、
どんなに小さくても弱くても、綺麗だよ…)
瑠璃が笑った様だった。
政宗は瑠璃が何を言わんとして、
何を揶揄っているのかを思った。
「そうか」
(きっと家の事)