第21章 文蛍
外に出掛けようとする瑠璃は、
いつも童女のように無邪気で可愛らしい。
そんな瑠璃に手を引かれ、
山里の小川までやって来た。
「今日は風も無いので…あっ、ほらっ!」
無数の菜の花色の光が目の前を流れてゆく。
「蛍か」
政宗は、なーんだ、と言う風に笑った。
「蛍ですよ。綺麗ですねっ」
瑠璃の声が弾んでいる。
真っ暗で表情はよく見えないが、
柔らかな笑顔を蛍に向けているのだろう…と政宗は思った。
「あぁ、綺麗だな。
花火もだが、儚いものはどうしてこうも美しいんだろうな」
相(愛)求め 飛び交い散るは 儚くも
命短し 瞬の花かな 政宗