第20章 嫌ワレ毛虫来客ス
(そっか、三成様の声が心地良くて…)
「はい」
瑠璃は布団に起き上がったまま、
文机の政宗を黙って見ていた。
すごく疲れた様子も、不機嫌な様子もない。
普段通り、よりも、少しばかり機嫌がいいようにも見える。
上がった口角。
(良い事あったのかな…)
顔を俯けて、上げるとドキドキしながら口を開いた。
「佐竹様は…」
「ああ、ようやく帰った」
「有意義でしたか?」
「まぁな、思ってたより、楽しかった」
口調は穏やかだが、瞳はキラキラと想いをかたっていた。
「昔の俺を知るヤツはこっちにはいないだろ。
昔話に花が咲くってやつだな」
(楽しかったんだ。
私は独りだったのに…それに、
私には楽しい昔話は出来ない…)
「楽しく、有意義でしたなら、なによりです」
無理矢理作った笑顔が苦しかった。
声に力が入らなかった。
語尾が弱くなって消えそうだった。