第20章 嫌ワレ毛虫来客ス
「…瑠璃?どうかしたか?」
「いえ、どうも…」
「どうもしないって顔じゃないぞ」
政宗が心配そうに立ち上がると、
瑠璃の傍に寄った。
「どこか痛いのか?」
(痛い?)
「…痛い?…痛くなんてー…ありませんよ」
言葉を飲み込んで、
言葉をすり替えた。
言い聞かせるように笑って言葉を繋ぐ。
「政宗、案外、佐竹様と楽しく過ごしたんですね。良かったっ」
「瑠璃?」
「あっ、私、佐竹様に、前立てが何故毛虫なのか、聞きそびれてしまいまし「おい、瑠璃…」
政宗が、ずっと、佐竹様と一緒で、
私を除け者にするから、ですよ?」
取り繕う様にボロボロと言葉が出てくる。
(自分の意思じゃないみたいに)
「私じゃ、楽しい話も出来ませんから。
私、政宗の事、知らないし。
戦場での政宗も、
もっと若い時の政宗も、
家の事も、昔の事情も、
何もっ……だから、私はっ「瑠璃っ!」」
言い終わらないうちに瑠璃は政宗に抱き竦められていた。
「瑠璃ーー…。お前……」
感極まったような安堵したような声音を響かせて。
「…それ…」
更にきつく抱き締められる。