第20章 嫌ワレ毛虫来客ス
顰めっ面の政宗が睨む方向には、
和顔愛語でツラツラと賛辞賞賛をならべる義重。
「ーー……この度は拝謁を頂き誠に有り難く存じます」
そう言って形ばかりが良い挨拶をきっちり述べ上げた。
「佐竹、長旅ご苦労様であったな。
秀吉、相手をしてやれ」
ぞんざいとも取れる程の言葉を残しただけで、信長は席を立つ。
あたかも自分の客人ではないと言った態度。
秀吉と義重が何を話したかは知らないが、
その夜、参城の宴が催された。
「政宗さん、嫌なら帰ればいいでしよ」
「馬鹿言え、今帰ったら、俺が尻尾巻いて逃げるみたいだろ」
「考えすぎですよ」
宴なんて面倒な家康と、政宗がボソボソと話していた処へ
「伊達の坊、久しいですな。
奥州を握った後はのんびり中央とは」
義重が嫌味を仕掛けてきた。
「そんなんじゃない。
信長様に呼ばれたからここに居るだけだ」
「なれば、早う嫁でも娶り奥州に落ち着けばよかろう」
(この席空けろって?このオッサンが)
「ここには年寄りは要らねえ。
おっさんは上杉と仲良くしてろよ」
嫌そうにしていた割には活き活きと口撃している様に見える。
(まるで戦の話をしている時みたいに)