第20章 嫌ワレ毛虫来客ス
嫌い嫌いと言いながらこれほど活き活きと言葉を交わすなら、知人が来るのも悪くないのではないか、
と瑠璃は思った。
しかし、
「瑠璃、お前は帰れ。
多分遅くなる」
宴半ばで政宗にそう言われた瑠璃。
見れば義重は酔いが回り始めている様だった。
「分かりました。
皆様、私はこれにて失礼致します」
そして、その夜、政宗は戻ってこなかった。
翌日も、義重に捕まったらしく、
一緒に行動していたようだ。
(なんや、嫌いじゃないやん)
「まぁ、政宗が楽しいなら」
(私も嬉しいかな)
そう思っていたら、一日中放って置かれた。
その翌日も、翌々日も
「三成か家康と一緒にいろ」
とだけ言われ放置された。
(もう4日や…)
「瑠璃様、今日は特に急用はありませんからご自由になさって下さい」
三成からも暇を出され、時間を持て余した。
久しぶりに城の自室で琴を奏でる。
(佐竹様はいつ帰らはるんやろ…)
ふとそう思うと、いつもは迷いのない張りのある音が、緩んで乱れた。