第19章 氷も溶ける甘味なコト(R18)
一方、政宗と瑠璃。
渡殿を幾つも渡った小殿に居た。
瑠璃は政宗の前に静然と座っている。
なんとも礼慄とした雰囲気の瑠璃。
「…瑠璃…俺はお前の親ではない。
そんなに硬くなるな。
肩の力を抜け」
部屋で2人きりで向き合う時の瑠璃はいつも、どんな時でも、気を張っている。
そんな瑠璃の惶恐感(こうきょう)を感じて、政宗も向き合う度に憔慮(しょうりょ)していた。
あの信長と広間で対峙する時は、
それ程の恐れも、緊張も、強張りも見て取れないのに、
政宗と2人きり、向き合う時には見られるその強張りと緊張。
それに隠れているのは、叱責への不安、
罵倒殴責への恐怖だと言う事。
何度も向き合うたびに政宗は気付いた。
そして、その態度は政宗にだけ。
それは、政宗が瑠璃にとって大切で、
大切だから嫌われたくないと思っているから、緊張し萎縮するのだという事だろうと推測出来た。
※惶恐…おそれつつしむ。
※憔慮…やるせない思いをする。苦しみ思う。