第17章 かき氷大作戦
おもむろに、
謙信の盃を持っていない方の手が瑠璃へと伸びる。
スッと瑠璃の眦を親指で擦撫して、
絹の黒髪をパラパラと遊んで過ぎた。
「……氷を溶かすのも、
淵から掬い(救い)上げるのも、
浄化するのも、謙信様の御心次第です」
銀鼠色の瞳に謙信が映る。
「…心、な…」
心の籠らない謙信の心が言葉になって零れた。
「大切な人、物、野望、志、そんなモノが生きる為の糧、材料、源 となるんだと思います。お考えになってみては如何でしょう」
虚沖(きょちゅう)の謙信には、思いを込めた瑠璃の言葉も空疎でしかないのかもしれない。
(私は謙信様の何も知らない。
だから、空言でしかないかも知れない…)
それでも、瑠璃は誠実で率直な意見を述べた。
※虚沖…心をむなしくした状態。
※空疎…くうそ/形だけで実質的な内容がない事。
※空言…役に立たない議論や言葉。