第3章 政宗と姫の或る日 其の弐
「言ってみろ。
その棘、俺が抜いてやる」
自信のある勇敢な政宗の眼が、真っ直ぐに瑠璃を見詰める。
「ほーら」
蒼い瞳も促してくる。
「……容姿くらい綺麗でなくてなんの価値があるのか、と……私は、『容姿しか価値がない』と言われたみたいでした。
習い事も学問も頑張っても、たいして認められていなかったので、母はやっぱり、私の容姿だけ を重要視していたんでしょうね…」
現代にいた時は心を必死に固め武装していたから、なんともなかったけれど、離れて今、改めてそう考えると、悲しくも悔しくもなった。
「認めてられていたのは、容姿だけ。
容姿以外はどうでも良かった。
なら、私は私で無くても良かった」
冷淡な声音、抑揚のない口調で瑠璃が話す。
「そんなに認められたかったのか」
「それはっ!…」
政宗の「馬鹿馬鹿しい」と言わんばかりの言い草に抗議しようと声を上げかけた瑠璃だったが、政宗はなんでもなさそうに続けた。