第3章 政宗と姫の或る日 其の弐
向きを変えさせ、胸に抱き締めると、
瑠璃が肩を震わせているのが分かった。
「何で泣くんだよ。
泣くような事じゃないだろ。
こんな傷痕はいつかは消える。
瑠璃、愛してる。
どんな姿になってもだ」
いつもそう言って勇気づけてくれる政宗。
それを疑うわけではないが瑠璃は、いつもその言葉を素直に受け止められない。
「私が、綺麗じゃなくても?
傷だらけでも?」
瑠璃が寂しげな瞳を向ける。
(綺麗じゃなくても?そんな顔するって事は…)
瑠璃は思い出す。
『容姿くらい綺麗でなくてなんの価値が貴方にあるの?
その容姿で良家の子息でも連れて来なさい』
その母の言葉は
(容姿しか価値がないんだ…)
と瑠璃に思わせた。