第15章 些細な出来事と重想
挑発だとわかっていても、
馬鹿にされていると解っていても、
抑え切れない怒りが込み上げる。
(耐えろ、耐えろ、耐えろっ!)
掌に食い込む短い爪の痛みに、
政宗は眉を寄せ、目の前の光秀を睨む。
「もし、守ってやり切れなくて、
命を落としたとして、アイツが悔やむと思うか?
恨むと思うか?
思い通り、自由に出来て満足だ、と笑いながら言うだろう。
お前はアイツの本当の笑顔を望むのであろう。
だったら、簡単な事ではないか」
光秀は言いたい事を言ってしまうと、
政宗の抗議も反論も、何の答えも待たず、馬に跨った。
そして、
「もし、お前のくだらない思いで、アレを苦しめるのなら、俺が貰う」
追い討ちをかける言葉を残して、
光秀は馬を出した。
(言い逃げかよっ)