第15章 些細な出来事と重想
夕餉の時刻には帰って来なかった。
黄昏頃(8時頃)
「戌の刻を過ぎたな。政宗が心配しているだろうな」
伊達御殿門の前に馬を停めた光秀が笑う。
と、
「心配したに決まってんだろ」
門に凭れて政宗が腕組みをして睨んでいた。
何刻から待っていたのだろうか。
スイッと瑠璃の顔を見た光秀が苦笑する。
「思われ過ぎるというのも、不便だな、
瑠璃…ククク…」
「光秀さま…どぅ…」
(どうして…は無い。この人も人をよく観察している)
先に降りた光秀に手を取られ、
馬を降りた瑠璃は
「お休みなさい」
静かな声で挨拶だけすると、
光秀に背を向け政宗の横を黙って通り過ぎた。