第15章 些細な出来事と重想
それから幾日か後、
早目に御殿に帰った瑠璃を待っていたのは
「帰ったか」
「光秀様…私、光秀様の御殿と間違えましたか?ふふふ」
「わざとらしいな」
「光秀様こそ」
笑顔で牽制し合う。
政宗は瑠璃と光秀が並んで自分の御殿の門から出てくるのを見た。
(アイツら夕刻から何処に行く?)
瑠璃が光秀に笑いかけるのをみて、
政宗は胸が締め付けられるように軋んだ。
後をつけようかとも思ったが、
足が動かなかった。
(光秀とは何もない事は明らかなのに…どうして…)
気になるのか。
瑠璃は、光秀と何処へ行ったのか。
瑠璃が光秀と出掛ける理由を政宗は知らない。
政宗だけではなく、信長以外の者は誰も知らない。
信長、光秀、瑠璃の3人だけの秘事だった。