第15章 些細な出来事と重想
吐く息はもう甘く熱い。
「ほーら、早くしないと……」
右手でそろっと、内腿を撫でる。
「…ぁ…はぁ…ん、まさ、むねぇぇっ!」
力を振り絞って、瑠璃が政宗の手を振り払った。次瞬、
「⁉︎」
瑠璃の身体が揺れて、膝がカクンッと折れて、お湯に足を取られ、
バシャン‼︎と尻餅をついた。
捉えようと手を伸ばしたが間に合わなかった。
(あ.…)
自分であげた飛沫を浴びて、ずぶ濡れで目をパチクリしている瑠璃。
「だっ、大丈夫か、瑠璃」
慌てて近寄ろうとして、
「大丈夫です…」
唇をチョット噛んでから、
何やら冷んやりとした声で制された。
(何だ?)
「えっと…瑠璃…?」
(怒ったのか?)
瑠璃の雰囲気に上手く言葉を紡げないでいると、
「平気ですから」
雫を垂らしながら立ち上がると
「私は、先に出ます。
朝餉の膳は政宗の部屋に運んでおきます」
そう言って政宗を見もせず、
スッと横を通って行ってしまった。
戻って来てから最近では感じていなかった、
余所余所しい気を感じた。