第15章 些細な出来事と重想
「家康の?こんな朝っぱらから、何の用で…」
「弓の練習です」
つれなく答えられた。
「家康様が、いつでも使って良いと仰って下さったので」
「……」
政宗は弓は然程 興味がないので、
弓道場を敷地内に設けなかった。
弓の練習をするなら、家康の処に行くのが1番近い。
以前に教わっていたの事もある。
行っちゃいけないわけじゃない。
いや、行っても構わない。でも…
などと考えている政宗の耳に、また硬い声が届いた。
「練習しないと感覚が鈍りますので」
張りつめた気を纏った瑠璃が冷めた瞳で政宗をみている。
(精神集中し、研ぎ澄まして来た故の硬さか?)
ニコリともしない。
「そ、そうか…」
「それだけでしたら失礼しますね」
と瑠璃は嫌われていると取れるほど、
素っ気ない態度で歩きだした。
政宗はその背中を見送って、ハァーーと息を吐く。
政宗も気を取り直して歩き出した。