第15章 些細な出来事と重想
ある朝ーー。
鍛錬を終えて道場から出て、
瑠璃に出会した。
「おはようございます。朝稽古お疲れ様でした。政宗」
政宗に丁寧に挨拶と礼をした瑠璃。
だが、政宗はその声音に心なしか違和感を覚えた。
(ここ、小十郎いないよな)
以前の事を思い出して、周りを見回しても自分と瑠璃しかいない。
なのに、なぜそんなに硬い声を出すのか。
「瑠璃、お前、何処かへ行っていたのか?」
こんな朝早くにどこに行って来たのか。
たぶん、1人で。
答えは、難なく返ってきた。
「家康様の御屋敷に、行っておりました」
何の感情も見られない、ただの報告みたいな言い方。
(この間から、家康、家康だな)
そう思って、煤のような黒い感情が政宗の胸を覆った。