第15章 些細な出来事と重想
「破傷風に効く薬が減ったんです。
戦が続くと、負傷からの破傷風や、山での虫蛇などの咬傷で帰ってくる兵士が増えるので、補充したくて」
家康は説明しながら更に材料を用意している。
「美弥さんが、針仕事が忙しくて手伝えないと言われるので、私が代わりに手伝いに来ました」
事の経緯を瑠璃が説明する。
「そっか、そうだったのか…ハハハハ…」
「ねぇ…瑠璃。アンタ、政宗さんに何にも言わずに来たの?」
「はい。
言う必要ありましたかね?」
「無いけど…あったみたいだね…」
政宗は じとーっ と流し目で家康に睨まれた。
(ゔ……)
「?」
瑠璃は首を傾げて家康を見てから、
政宗を見て、また首を傾げた。
「……」
「そんな 早とちり、って言うか、
勘違いするの秀吉さんくらいなのに…
本当…瑠璃の事となると……
色男の名折れですよ」
家康に呆れられた挙句、余計な事を付け加えられた。
「家康っ」
「なんですか、政宗さん」
「う…っ…」
「家康様、何の話か後で聞いてもいいですか?」
ふふふ…と瑠璃が俺を見ながら笑う。
「いいよ、後で詳しく教えてあげる」
2人の今の美笑より、後で何を吹き込まれるか恐ろしくて、
「悪かった…」
素直に謝った政宗だった。