第3章 政宗と姫の或る日 其の弐
瑠璃はずっと傷痕の具合を気にしていたが、お夕には勿論見せられない。
自責するだろうから。
他の女中にも背中を見てもらうのは躊躇われた。
見れば同じ女として、苦痛を感じるかも知れないと思ったから。
だから、どれくらいの痕なのか知らない。
(政宗になら…政宗なら…)
苦哀な気持ちにならないでいてくれるだろう。
そう思った。
最近、明るい場所で背中を見なかった。
政宗は薄闇での行為でも、出来るだけ気にしないようにしていた。
四つん這いにさせた瑠璃の背中を掌で撫でれば、凸凹があるのは感じられたが、細部は判らなかった。