第12章 政宗姫想フ
『美味しかった』と
とても満足そうな瑠璃の声。
それは、
『政宗…気持ちいいーー……』
情事の時、とても幸せに満ちた
気怠くて甘い、満足げな声と重なった。
「ゔっ…ッ…」
(ダメだ、考えるな俺っっ)
育ち、家柄、それはどうしても出てしまうものだ。
培われた、養ってきた品位。
声、言葉、動作、作法、
どれか1つ取り上げても、見えてしまう。
手に入れるのも、隠すのも、簡単な事ではない。
それなりの努力が必要だ。
(どうやっても、出てしまうモノだ)
それは時に
「残酷なものだぜ」
軆(体)が全てを語り明かしてしまうから。
「まっ、美弥はそんなもん気にもしてないのが、良い処だけどな」
いつも我が道を一生懸命歩いている美弥を思い出す。
信長様が美弥を気に入ったのも、
その辺りだと俺は思う。