第11章 西国の2人
真っ直ぐに自分を見る瑠璃の、
銀鼠色の瞳を覗いて、真意を探れど、
澄んで揺るがない瞳に、隠れて、
探れる物など何もなかった。
「…俺は……それ程、善人ではないが…」
(無防備に、近寄るな)
吸い込まれそうな瞳の瑠璃の瑶貌。
結ばれた紅唇が、啞を描き、
白い歯がチラリと覗く。
ぅふふふ…
「今更。知ってますよ」
(警戒しろ)
自分へなのか、
この優しく美しい妹のような女へなのか。
「もし、貴方が悪人だとしても…
…大切に思っています」
瑠璃が言い切った。
迷いも、揺るぎも、不信も無い。
自分を信じるその声音。
琴の弦を一音 弾いたように澄んで美しい。
※瑶貌…ようぼう/玉のように美しい顔。
※啞…あ/驚き、あきれる。