第10章 猜疑の船旅
4日目の昼過ぎ、
安芸国の境、周防へと到着した。
「悪いな、此処から先はまだ俺の領地じゃないんで、自由が利かねーんだわ」
そう言う元就からは、申し訳なさそうな様子は微塵も見られなくて、瑠璃は内心笑ってしまった。
「毛利様のお陰で随分と早く、
西国を渡る事が出来ました。
感謝いたします。
此処からが大内様の領地ですか」
「ああ、そうだ。
俺も楽しい船旅だったぜ。
道中気をつけろよ。
お嬢も達者でな」
光秀と話していた元就が瑠璃にも笑いかける。
「元就様の船は快適でしたわ。
鳴門の大渦も見ることが出来て感激です!」
「大袈裟だなぁ、おい」
と言うも、満更でもない。
「色々なお話も聞けて楽しゅうございました。
それに、元就様の弱点も手に入れましたしね」
うふふふ と、意地悪に笑う瑠璃。
元就が首を傾げる。
「俺の弱点…?なんだそりゃ」
「お酒、弱いってこと」
「ふぅーん、酔わせてどうするよ」
瑠璃の応えをワクワクと待つ。