第10章 猜疑の船旅
「播州 坂越は塩止まりとも言われていて、
潮も止まるし、塩も集まる」
播州は潮待ちの町であり、塩も作っている。
元就は瑠璃を連れてそこここの港の知識を披露しながら、町を歩く。
「光さんはどうしてるんだ?」
「兄様は美味い酒を探しに行くと言ってました」
さっきの事は忘れたかの様に、
朗らかに瑠璃に笑いかけられて困惑する。
(なんでそんな、何もなかったみたいに出来んだ)
「…ぇ…と…そっか…」
元就は瑠璃の笑顔に気もそぞろだ。
(なんで、こんなにソワソワする?)
「元就様はお酒、お好きですか?」
瑠璃は元就の気など知るわけもなく、
尚も笑顔で話をしてくる。
「俺?俺は酒はほとんど飲まねぇよ。
飲んで薬酒だな」
「まぁ、意外です」
心底意外そうな顔で、元就を覗き込んだ瑠璃。と目の合った元就は、バッッと顔を背けた。