第10章 猜疑の船旅
(疑わしい素振りを見せるこの女が、公家…)
まだ疑わしいが、よくよく思い返してみれば
『船に乗るのは2度目です』
『堺は大筒が有名なのね』
『烏賊焼き…丸々焼いただけ…』
『皆、あんなに薄い草履で…
…一生懸命働いて…』
庶民なら当たり前の事を知らないと言うのが、言葉の端々に出ていたと思う。
「…悪かったな……」
そう言って、視線を外した元就が、
瑠璃の着物の前を引き合わせ、
身体の上から降りて、上半身を起こして座らせる。
「ありがとうございます…」
「……礼 言うなんておかしいだろうが…」
(押し倒し、乱暴しようとしたヤツに礼なんて言うか?普通)
「公家の姫さまの考えるこたぁ、
よくわかんねーな…////」
身体を起こすのを手伝った元自分にお礼をのべた瑠璃に対し、元就は、バツが悪そうに、
顔を背けながらも、照れて赤くなっていた。