第10章 猜疑の船旅
「はい、ありがとうございます、元就様」
お礼を言ってはにかんだ。
恥ずかしそうな表情は、男を勘違いさせてしまう位には扇状的だった。
「元就様は案外、お優しいのね」
「案外ってなんだよ〜。
お前の中の俺の印象ってどんなんだ」
「聞きたいですか?」
悪戯っ子みたいな表情で瑠璃が元就を見てから、下を向いてクククと肩を揺らす。
(そんな笑う?どんな印象だよ…)
聞きたいような聞きたくないような、元就。
「そーーだなぁ〜〜……」
「それ程悪くはないですよ?」
瑠璃が銀鼠色の瞳で深緋色の元就の瞳をジッと見る。
「…そっ、そっか?」
「はい、でも、やっぱり内緒🤫にしておこっかなっ」
瑠璃はそう言って軽い足取りで船内に入っていった。
元就は呆気にとられたまま、
瑠璃の後ろ姿を見送った。