第10章 猜疑の船旅
「え"っ、なんだそれっ!聞いてないぞっ」
外から帰ってきたばかりの政宗が叫ぶ。
「今言いましたからね」
我関せずな家康。
「政宗様はいらっしゃらない間の出発でしたからね」
にこやかに事実を突きつける三成。
「ゔー…謀ったのか、俺を嵌めたのか⁉︎
嵌めたんだろ?」
地団駄を踏んで詰め寄るが
「「嵌めたのは信長様ですよ」」
家康と三成、異口同音で素気無く応答される。
「くぅうううーーーーっ💢」
今更どうする事も出来なくて、拳を握りしめ唸る。
信長に伺いに上がれば
「西の情勢を見に行かせた。
四国の三好、安芸の毛利、筑前の大内。
付け入る隙があるかどうか、見に行かせた」
何の事はない理由。
「しかし、俺のいない間に、勝手に…
しかも、俺をわざと他所にやったでしょう」
ジロリと政宗は信長を恨めしそうに睨む。
信長は何のことはない澄まし顔だ。
「気付いたか?
仕方なかろう。話せばお前は瑠璃を行かせはしまい」
大正解。
「どうしても瑠璃が必要だったのだ。藤原の名がな」
信長は下冷泉藤原の娘が、筑前の守(かみ)に目通りを願う偽物の書状を持たせ、光秀と下らせたのだった。