第10章 猜疑の船旅
帆に風をうけ、船は進む。
天気は快晴。
元就は何人かいる船員にも好かれているようだった。
(人心掌握に長けていたと、史実にもあるし、
まあ、豪快で楽しそうな人やし、好かれて当然かな)
瑠璃は甲板で風を受けながら、元就を目で追っていた。
まるで好きな人を追うかのようにも見える。
「今日は風も潮目もええけぇ、備中で泊まれるかもしれんな」
男達が帆を調整している。
(備中…岡山ね)
瑠璃は現代の地図を思い出しながら、
今いる場所を確認した。
(それにしても、瀬戸内海は本当に穏やかなんやなぁ〜)
甲板に立っていられる程だ。
風も気持ち良いくらいだ。
あの日は太平洋の海に、冬の風で大揺れだったのかな…と、政宗と旅した時の事を思い出して、独り苦笑した。
(そう言えば…政宗、どうしてるやろ)
すっかり忘れていた政宗の事を思い出した。