第10章 猜疑の船旅
窓際にある四角い箱。
(あれは和磁石の類だろうが、高度な)
光秀が知る和磁石よりも多くの情報を1度に得られるように改良された物だ。
(羅針、星盤、日時計、八卦、一目で分かる)
壁には、細密に描かれた瀬戸内の海図、海流図などか見られる。
そして、甲板には船首横に大筒が設置されている。
(…アレは…)
ガチャッ
扉が開いて、驚きの声が入ってきた。
「‼︎‼︎、おーっと……
心の臓が止まるかと思ったぜ」
はっはははは
笑いながら元就が歩いて来ながら、
長銃を構えている光秀を笑い飛ばす。
「珍しくて、つい…申し訳ない。
それにしても、ここには見た事のない物がたくさんありますね」
光秀が褒めると、元就は得意顔で答える。
「明や南蛮の航海用品だ。
気に入った物は手に入れたいんでな」
(気に入った物……)
次は他に何を手に入れたいのか。
光秀は澄まし顔で、黙ってその言葉の深意を探る。
「そういえば、お前さんの妹…瑠璃は素直で可愛いな」
(気に入ったって事か)
「素直?アレが?俺にはいつも反抗的で困っておりますよ」
苦い顔の光秀。
((読めないーー…))
元就も光秀もお互い同じ事を思っていた。