第10章 猜疑の船旅
「お嬢は船酔いしたことあんのか」
「はい、その折は本当に参りました…。
揺れて揺れて…ぅ…思い出しただけでも酔いそう…」
顔を顰めた瑠璃を元就が笑う。
「あっはははっっ、そうとうキツかったんだなぁ。
大丈夫だ、俺の船はそんなに揺れんし、
瀬戸の海は穏やかだからな」
自信たっぷりに笑う元就に瑠璃は求心力の強さを感じた。
(…包容感、安心感?じゃなくて、熱量?)
人は底知れぬ自信に満ち溢れた者に憧れ、敬畏、信頼を抱く。
信長が上に立つにふさわしいのに似ている。
元就が瑠璃と甲板で、話をしている頃、
光秀は船室の椅子に腰掛けていた。
(船内は異国の船の様子だ)
それだけ元就が南蛮の船を目にしていると言う事になる。