第9章 西国見聞録
(毛利元就か?)
目の前に立つ男。
快活で自信に満ちた表情。
船上で日に焼けたのだろう褐色の肌。
「これは…西の猛将、毛利元就様にお会い出来るとは。
妹が世話になりました」
深々と頭を下げれば、
「いや、先に失礼をしたのはコッチの方だ」
(存外、常識的だな)
破天荒、型破り、勇猛ではあるが喧嘩っ早く、
見境なく全面突破すると聞いていた。
「ところで、お前達は筑前へ行くんだってな」
「……」
目の合った瑠璃に、にっこりと笑われた。
「ええ」
「馬で行くより船の方が早い。
安芸の端まで俺の船に乗ってけよ」
船に乗れば、何かあっても逃げることが出来ない。
(なにか企んでるのか?)